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2025年4月9日水曜日

グレン・ビルプ先生の人物ドローイングとアナトミー

 先週に引き続きビルプ先生の講習会に2日間参加してきました。


ずっと人物画には苦手意識があって、去年の同じ時期のビルプ先生の講習会でも「ああ上手く描けないなあ」などとぼやきながら頑張ってた記憶があるんですが、なんで描けないのか深く考えてなかったというか、そもそも普段から人物画を描きたいとあんまり思わないのでこういう機会があるたびにちょっと描いて凹むみたいな感じだったんですよね。

ただ去年は1年の間アニメの仕事がハードで、動物作監、設定の作成などひたすら動物を描きまくる年でした。しかし動物担当なので人物を描く機会はほとんどなく過ぎ去ろうとしていたその矢先、最後の最後で最終話の一番重要なシーンの一番良いカットが来てしまったときは動物だけじゃなくメインキャラも勢揃いしていたので、どうしようキャラが描けないとか言えない…とかなり焦りました。結果的にやってみたら自分で思っていたほどひどい出来にならずに済んだので(作監様誠にありがとうございます)ひょっとしてこれは私は人物が下手なのではなくて単に描き慣れてないだけなのでは…?と思い始めたのです。

ビルプ先生の講習会今年のスケジュールは動物(オンライン)→着衣の人物の服のしわ→ヌード人物ドローイング(2日間)の順番だったので2回目の講座ではしわを描きましたが、難しかったです。特にヌードの人物が描けないのにしわの下の人体構造なんてわかるかー!
しわの講座からヌードドローイングの講座までの間1週間あったので、その間仕事の合間に練習してました。


人体が描けないのは基本的なことができてないからなのでは?との考えに至り、ゴットフリード・バメス著の基本の人体デッサンを模写して人体のプロポーションを練習したり


胴体を描いたりしてました。(他にもいっぱい描いた)
こういう描き方本って、見ただけでわかった気になって実際に描くことをあまりしてなかったけど、やってみていろいろなことがわかりました。ただ真似して描くだけじゃなくて、この描き方を使って動画の人物のポーズを分析したりしましたが、思った以上にうまくいかなくて笑いました。見た人物のポーズとこうかな?と想像する骨盤と肋骨の向きがなかなか一致しなくて何度も描き直したり…



で、ビルプ先生の2日間のヌードドローイング講習1日目です。基本最初に先生の考え方やこのような描き方をしてみましょうなどのレクチャーがあってその後実際に描いてみるという流れです。


先生が一人一人回って講評してくれて、いくつかアドバイスをもらいました。上記画面左の2体が私が描いたもの、右の2体は先生のドローイングです。目の前で「ここに注意すると良いよ」というポイントを示しながら描いてもらえるのは至高の体験です。私の絵は「まだ輪郭に囚われている。大切なのは動きだ」とのことでした。
まだこの時は動きというのは中身の骨とかのことだと思ってました。
先生が描き始める線は背骨とか肋骨とかで、そういうものを見切れるようになれってことだと…。背骨から描いても外側の輪郭と合わないんすよ。ずれるんですよ。なので首が変なとこに付いたりうまく動きがつながらなかったり。


その夜。ペットのリーフくん(アメリカモモンガ)を見て動きから中身の骨格とかを探ってみたり。描くことは考えること…。触られるのを嫌がるペットの中身ってどうなってるんだろう…う~ん


人物ドローイング2日目。いきなり「みんな!鉛筆はこう持つんだ!」と持ち方を矯正されドローイングを「ふんわり」描くやり方を伝授されました。
持ち方を変えると力のかかり方が変わるし引きたい場所に線は引けないしもう散々で
「慣れぬ持ち方を強要されても煩わしかろう。だが…(中略)道具の持ち方には良い悪いというのがあるのは何故か。一度考えてみて欲しい」私の脳内でセンシのセリフが再生されまくりでした(ダンジョン飯脳)


「ふんわり」描くのはドローイングにトーンをつけるためなのですがこのトーンというのは陰影とはちょっと違うようで3Dのデータにおける「デプス(深度)」みたいなものらしい。それを鉛筆で表せれば立体感がよりわかりやすく描けるのだ。これはおもしろい。


2日目の実践では昨日教わったことをとにかく漏らさずやってみようということから始めたら先生に初めてサムズアップと共に「いいですね。これであとは1万時間描きましょう」とコメントをもらえました。
この時の嬉しかったことと言ったら!
しかし更にその後の講評では調子に乗ったのかプロポーションがおかしなことになっていて「もっと注意深く描きましょう」と言われました。



この日の終わりのドローイング。これ、たしか2分ポーズだったと思います。

「輪郭ではなく動き」の「動き」がなんなのか。骨じゃなかった。なんか、ポーズから感じ取れる流れとかそういうもので、そこから骨や輪郭や体の向きやなんかを探り出していく過程が「考える」ことなのかな
そうかそういうことか…!
と何かわかった気がしたんです。
それがこの結果に表れてると思います。

先生が何度も何度も言っていた言葉
「写し取るのではなく分析しましょう」
「輪郭ではなく動きを捉えましょう」
「描くことは考えることです」

絵を描くのがライフワークの私にとって人生の指針みたいな言葉です。
「モデルを写し取らない」というのもイコール「好きに描いて良い」って意味でもないんですよね。分析しろって言ってますから…

これだけ進展があると講義が終わっても描くのを続けたいって気持ちになりますよねー…

ここからは個人的感想なんですが



今日のドジャースの試合を見ながらジェスチャードローイングしていて思ったこと。昔からジェスドロはたまにしてたんです。動きを捉えるクイックスケッチはアニメーターとして動きを描く練習になると思っていたので。


たとえばこれは2022年12月。ボーンデジタルさんがGesDrawPartyなる動画を公開してくれてるのでそれを使ったりしています。
美術解剖学は2018年ぐらいから勉強を始めていて中身から描こうと努力はしてるんですが輪郭に囚われています。

ジェスドロってスピードを出すために見た印象の線、Line of Actionをガッガッと描くんですよ。勢いのある動きを描きたいときのツールとして良いんですが、モデルさんの立ちポーズって静止してるじゃないですか。そこに無理矢理ガッガッとした動きを見いだすの難しくないですか?
最後はなんか手癖になっていくんですよ。

速く描くための最強の武器、手癖

これがまた厄介で。
私が人生で最も描いた人物(人型をしたキャラ)はヤダモンだと思います。92年にNHKで放送してたアニメのキャラです。超ハマってノートにシャーペンで二次創作漫画を描きまくってました。他はりぼん系の少女漫画原作のアニメなどにハマっていてそういったキャラを模写したりしてました。
これらは見ないでも描けるくらい手に染みついてます。つまり手癖です。染みついてるので何も考えず手を動かすと「小・中学生の頃に見よう見まねで描いたキャラ絵」が顔を出します。
大学生以降もちゃんと人物を描いてれば手癖が更新されてたかもしれませんがカートゥーンにハマってしまったので人物らしい人物を一切描かなくなり、元々小学校低学年以前から大好きだったのは動物や人外キャラだったのもありで、人物画が封印されてしまいました。

アニメーターとして働き始めても人物が思うように描けず苦労し、結果的に背景、2頭身キャラ、動物の仕事ばかりしてきた結果ますます人物を描く機会が減り、今に至るわけです。

思えば手癖を壊して一から人体を構築する方法がずっと知りたかったのかもしれません。
美術解剖学は線や輪郭ではなく中身を知るという意味で一つのブレイクスルーになりました。それをどうやって「使って」いくかがその後の課題でした。それへの一つの答えが、今回の講座だったんだと思います。

それくらい画期的な変革があったんです。

「ルールはありません。ツールです」

すっっっっごいツールです。本当に。手癖をぶっ壊してちゃんと考えて注意深く観察して分析できるツールです。

この機会を作ってくれたスタッフの皆さん、ビルプ先生、本当にありがとうございました。



おまけ

2日目の夜のリーフくんのスケッチ。動く動物の動きを捉えようと試みてみましたが、前は見た側から脳内メモリーからどんどん消えてたのが、引き出して像を結べるようになりました。一体何があったのか自分でも謎です。おもしろい。ドローイングがおもしろいぞ!!!